わたしは「セロ弾きのゴーシュ」 中村哲が本当に伝えたかったこと
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出版社 : NHK出版 (2021/10/25)
発売日 : 2021/10/25
言語 : 日本語
単行本 : 232ページ
ISBN-10 : 4140818794
ISBN-13 : 978-4140818794
引用
p99
みんな、自分のふるさとのことになると一生懸命になるんですね。しかも食えるか食えないかの瀬戸際ですから、同じ日当で働くにしても気合が違うわけですね。
これも案外、日本では知られていないですけれども、アフガン社会で大事なのは、政治的な主張よりも血縁地縁、親戚関係、それから同郷出身者、この絆の方が遥かに強いわけですね。だから、作業員を見ていますと、元タリバン兵もいますし、元北部同盟兵、反タリバン勢力ですね、これもいる。極端なのは、米軍の傭兵だった人も働いているわけです。なかなかわかりにくいですが、政治では決して色分けできない地域なんです。 p101
だから、水路を作りますとか、井戸を掘りますだとか、あるいは、診療所を建てますよとかいうときは、必ず、モスクを中心とした共同体の人々に了承してもらわないと、これは事が進みません。そういう意味でも、モスクというのは、非常に大事な存在であるわけですね。もちろん、公共の掲示板ということだけでなくて、宗教的にも、金曜日だけは、悪いことをしている人も集まって、耳を傾けて、道徳講話を聞くという場所でもあるわけですね。 これがアフガン農村社会の一つのまとまり方、共同体の在り方です。村の中での人格者、さしずめ日本では庄屋さんみたいな立場の人になりますかね、歳をとってそれなりにみんなから尊敬される人たち、こういう人たちが集まって長老会をつくって、その地域にとって大事なことを話し合うというだけでなくて、執行権もある。ジルガで決定したことは誰も逆らえない。